ISBN:4041045053 文庫 佐藤 春夫 角川書店 1962/02 ¥357

詩集「智恵子抄」に沿った架空の光太郎と智恵子のお話。
光太郎と智恵子が、友人の紹介によって知り合い、
距離を詰め、一緒に生きていく決心とともに結婚をして
そして智恵子が段々心の病に冒され始め、そして死んでいくまでが
淡々と第三者の目から綴られる。

そうは言っても光太郎自身の手記としての智恵子抄がいっそう映えてくる事は間違いない。
「私は楽をするために貴方と一緒になるのではありません」
と言い切った智恵子に適齢期の私は自分を恥じたよ。ホント。

気が狂ってしまった妻をそれでも妻として扱い
ただ心を与えつづける光太郎が、読んでいて泣けてくるなぁ。
愛、なんて陳腐で愚鈍な言葉を当てはめるのは勿体無い。
人が人に向けて持ちえる情の深さ、とでも言うのでしょうかね。
お互い認め合って求め合って一緒になった夫婦だけに
智恵子が心を病んだ後の二人の関係が美しい物に見えてくる。

久し振りにほろほろ泣いた。
夫婦ものには弱いな。

★★★★☆

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