ISBN:4043522037 文庫 牧野 修 角川書店 2002/01 ¥820

この本は表紙がイイ。
返り血の付いたピンクのワンピースを着たおばさんがヒトの手首だけを握り締めている。
ホラ意味深。勿論手にはナイフね。

この本はタイトルがイイ。
ま、ぶっちゃけこの話は『オズの魔法使い』モチーフなのだが、『だからドロシー帰っておいで』。
?だから?。前置きも何も無く、だから帰って来い。と。
だからの前に何があるのか知りたくなる事請け合い。

この本は登場人物がイイ。
可愛くハイソな姑。やたらキャラが変わっていく主人公主婦。
喋る腐乱死体【クビツリ】。

この本はミステリー仕立てなのがイイ。
はじめは別に確立された世界だったのがだんだんリンクされていく。
一体コレはどういう伏線なんだ!?とワクワクする。

なのに。
なのに。
オチがイマイチ。

もうちょい捻って欲しかった印象。
凄く世界観とか上手で伏線の張り方も上手だっただけに残念。
その癖妙に読後感は良かったりして。



★★★☆
ISBN:4102193049 文庫 永井 淳 新潮社 1985/01 ¥620

しまった。眠れない夜に読む本じゃなかった。
セレクトミス!!!セレクトミス!!!

主人公キャリーは内気で同級生から虐められ、
病的神崇拝者の母には縛られ、
その母の所為で近所の人には嘲笑と同情を受ける。

ハジメは虐めの仲間に入っていたが、良心の呵責に悩む同級生の女の子の1人が、自分の彼氏(人気者)に頼む。
『キャリーを舞踏会でエスコートしてやって欲しい。少しずつでも心を開かせてあげたい』と。
心優しい彼氏は、心優しい彼女の望みを叶える。

内気な虐められっ子のキャリーが、学年の人気者のトミーと舞踏会に出る訳よ。(計らいがあったけど)
ビクビクしながら、でもやっと自分も普通の女の子の様になれるかもしれない、とキャリーは希望を抱きますわね。
で、その上、そのコンテストでクイーンに選ばれちゃったりする。

……ああ痛い。
キャリーはやっと、やっと自分に希望を持ってるトコロだった。
やっと。

なのに自分が今まで生きてきた中での一番華やかなステージで、心無い人たちの手によって、落される。
恥辱と、自己嫌悪と、嘲笑と、悪意。
痛い。
痛すぎ。

豚の血まみれになりながら超能力を暴走させるキャリー。
キャリーは一体どうしたら救われたんだろう。
誰ならキャリーを救えたんだろう。

409人を殺し、街を焼く。
救いが無いじゃないか。
同級生の女の子の『心を開かせてあげたい』という気持ちすら良心から出たものなら余計に救いが無い。

ああ、痛い。



★★★★
最近よく耳にする言葉に『売れる本と良い本は違う』という物がある。
勿論誰が見ても面白い本はそりゃ売れるに決まってるのだけれども
なかなかそれだけでもない、と私自身も思う。

自サイト(http://www15.ocn.ne.jp/~placebo/)の2006年1/9の日記でも書いたのだが
売れるモノは“普段読書をしない人”を購入層に入れてしまえるもの。
重いテーマは売れない。
細かい字のモノは売れない。
なかなか読み終わらないものも売れない。

読書が癖付いてない人ってのは、まず根気が無い物だと仮定する。

反面、そうレベルの高いものも必要としないのがこの層かもしれない。
ここでは中高生にターゲットを絞る。(そこそこのお小遣いも時間もあり、ゆとり教育の弊害が出ている層)
私がもし『書きたいものを書く作家』でなく
『売れる本を割り切って書く作家』を目指すとしたら、本はこういうものを作る。

飽きさせないために分かりやすく奇抜な設定をひとつだけ用意。
字はそう詰め込まず、改行をマメに。
『本を読んだ』という達成感を味わっていただく為に、紙は厚くページ数は少なく。
口語文体上等。むしろ多少乱れている方が親近感をもたれやすい。
装丁はシンプルに。ココは砕けさせてはいけない。
(彼らには“書籍の本を読んでいる”というスタイルが大事なのであり、
装丁が漫画と変わらないならそりゃ漫画のほうを読むに決まっているから)

それから、ココ大事。
『乱れた世の中かもしれないけど、君たちの気持ちが僕にはわかる』
と知ったようなメッセージを込める事。
別段、その考え自体に理解が有っても無くてもいい。
そういう姿勢だけが大事。
あちらさんは前面に押し出されたメッセージしか読み取ってくれない物だと思うべし。
良くも悪くも、そうみたいなのだ。

勿論、書きたいものを書いてるわけじゃなく、売れるモノを、と割り切って書いているわけだから
メディア露出は絶対にしない。どんなに売れてもしない。顔出しもしない。
心有る読書好きからのクレームや批評も多く寄せられるだろう。
そんなもんは無視だ。
稼いだ奴の勝ちだ。ありがたがって読んでくれる奴がいるならそれで良いじゃないか。
世の中の中高生が頭悪い奴が多いのは私の所為じゃない。



山田悠介ってこんなんだったら面白いのにな。

AMEBIC

2006年2月13日 ★★
ISBN:4087747697 単行本 金原 ひとみ 集英社 2005/07/06 ¥1,260

色々な意味で悪く痛々しい。
自己陶酔・自己満足・自慰的。

個人的好みで言わせて貰えばこんな自分勝手な文章に
何の感想もつけたくないのだが
作品としてならば、突き抜けた分前作前々作よりマシか。

今流行りの(ププ)ドライブ感溢れる文章が書きたかったのだろうが
なんにせよ意味の無い言葉の羅列を読まされることが苦痛。

『コレあたしと一緒だ!共感☆』みたいな女もそこそこ居そうだが、
私はこれを格好良いと思えるほどもう子供ではなくなってしまった。


★★
ISBN:4872339215 単行本 ブルボン小林 太田出版 2004/12 ¥1,470

装丁に惹かれてつい、購入
わーん購入しちゃったよ。
だって何処からも借りられそうにない類の本なんだものー。

感想ですか。感想……。

えーとですね。私、昔からゲーム大好ッき!なんだけどさー。
イマイチ、うん、イマイチ、気持ちが入らなかった、かな。
ホラ、ゲームって古い新しいに関わらず、
『今自分がやってるゲームが自分の中で熱い』じゃない?
でもさ、その様子を他人が見て面白いかッてったら違うと思うんだよ。
いくら自分の中で進行形なゲームでも他の人から見たら
“古い・昔の・前やった・覚えてない・そう思い入れは無い”
だったりするじゃない。

だから、新作ゲームのレビューはそこそこ読めるんだよ。
だって同時進行でプレイしてる人が一杯いるわけだから。

この手の懐ゲーコラムは、割と作者のそのゲームへの想いと
読んでる人のそのゲームへの気持ちに結構なズレがあるように感じる。
(ここまで他に『フロッガー』に固執する人、居る?)

断言しちゃってもいいかな?
この本、一部のゲーム好きだった大きいお友達向け。
結構8ビットから好きだった私でも懐古主義の嘆きには賛同できないなぁ。

追記:あ、この人芥川賞取った人なの?長嶋有…。へぇ。



★★☆
ISBN:4198614911 単行本 戸梶 圭太 徳間書店 2002/03 ¥1,680

チンケな犯人を殺してしまい3000万入手するチャンスを得た刑事。
その元同僚の、癇癪もちの釣堀屋。
殺された犯人の持っていった銃を追う体中刺青のゲイカップル。
エリート監察官のシングルマザー。
ちっともまとまりの無い警察本部。
ロリータアニメ声の取引先の女。

ホラ、面白そう。
どいつもこいつも走りまくってて汗かいて馬鹿みたいですよ。

テレビ観ながらなんとなく手にとったのだが
5分後にはテレビの方を消してた。
文は粗いかもしれないけれどこの粗さが妙なアクティブ感を醸し出してて
私はこの戸梶圭太という作家さんが好きなんだと思う。
まぁ…ハズレはあるけどね。
読み終わった後になーんにも残らないこの読後感が好き。

安っぽいあのフォントは、あんまり好きじゃない。





★★★★☆

摩天楼の怪人

2006年2月10日 ★★★
ISBN:4488012078 単行本 島田 荘司 東京創元社 2005/10 ¥3,000

「チッ。あんたがあんだけ出し惜しみしてる間に
京極堂だの火村助教授だの紅子だの犀川先生だの
カリスマ(プ)探偵役は量産されてて、
もう誰も御手洗潔なんか待ってねぇんだよ。今更遅いよ」
と悪態つきながらもきっちり新刊が出たら読む。
なんだろう、なんか刷り込まれてる感。

今回は一つの建築物を巡ったミステリー。
フーダニットではなくハウダニット。
犯人役もなんも捻ってる所は無く、言われた物を言われたとおりに受け取っていて
充分最後までいける感じ。
御手洗が相変わらず不敵でアクティブで素敵…。
建物好きにはよいかもしれない。私にはイマイチ。
映像化、たのむ。無理だと思うが。

ってこの本3000円もするの!?
図書館で借りたので知らなかった…。
じゃ、★3個!確かに素敵本だったが3000円は高い。


★★★
ISBN:4163235108 単行本 角田 光代 文藝春秋 2004/11/09 ¥1,680

作者の方は女の群れに随分嫌な思いをしたんだろうなぁ。
私自身も実感するのだが、女性対女性の友人関係ってのは
ある種のルールがいつだって付きまとうもので、
それをこうバキッと目に見える形でなんの嫌味も無く
描き切った彼女は本当に筆力のある作家さんなのだなぁと思う。

えーと、この本はこの一文に尽きるね。引用。
「ひとりでいるのがこわくなるようなたくさんの友達よりも、
ひとりでいてもこわくないと思わせてくれる何かと出会うことのほうが、
うんと大事な気が、今になってするんだよね」


多分これが正しくあって欲しいのは、世の心理でなくて彼女の願望。
そして私自身の願望。


★★★★

盤上の敵

2006年1月31日 ★★★
ISBN:4062098768 単行本 北村 薫 講談社 1999/09 ¥1,680

私、北村薫の優しいタッチの文体が好き。

でも多分、この本をちゃんと噛み砕けてないような気もする。
だってね、三季の悪意の意味が私には良くわからなかったんだもの。
どうしても、『なぜそういう気持ちを持つに至ったか』を求めてしまう。
多分、この本で言いたかったのはそういう事じゃないとは思うのに。
『理由の無い悪意だからこその理不尽さ、
そしてそれは何の気なしにそこらに転がってるって事』
いや、頭では分かってるんだけどね。

微妙に消化不良。奥さんだって克服してないし。


★★★

エリカ

2006年1月15日 ★★★
ISBN:4120035913 単行本 小池 真理子 中央公論新社 2005/01/22 ¥1,575

どうした小池真理子!

突然死んだ親友の、愛人(古い言い方するとプレイボーイ)との
恋にずるずるはまって行くキャリア、エリカの話。
プレイボーイ湯浅に幻滅しながらも
彼に心の足りない部分を埋めてもらい、湯浅にはまって行く。

かぁぁぁぁぁ。腹の立つ話だ!

小池真理子自体が物凄く上手な作家さんだからこそ頭に来る。
湯浅に翻弄されるエリカにも
セックスした後に内心冷めていく湯浅にも。
変に気持ちが判るから、気持ちの移り変わる描写が丁寧だから
妙に生々しく感じられてしまうのでしょうな。
ああ、もう!

自分の心は自分でどうにかするしかないのに。
足りない物を他で埋めようとするから無理が出てくるのに。
死んだ蘭子はそれが出来たから湯浅と続いた。
エリカは湯浅に埋めることを求めたから冷められた。
ああ、それだけの話なのに何故こんなに後味が悪い?

どんな女の人でもこの本への腹立ちはあるはず。
それはどうしてかと言われたら、
エリカの願いは大多数の女の人と同じだから。


★★★

女王様と私

2006年1月14日 ★★★★
ISBN:4048736280 単行本 歌野 晶午 角川書店 2005/08/31 ¥1,680

少女が連れ去られて殺される事件が起こりまくってる今、
まさにタイムリー。
引き篭もり無職パラサイトの男が
やたら可愛い小学生少女に訳もわからず連れまわされる、と。
(え。何。これ何。)と一緒に困惑しながら読んだ。

オタクの数馬氏を、
誰もが思っていてもなかなか口に出せない程の悪態で
バッサリアッサリと罵倒する来未に胸がスッキリすると共に
自分自身の身の置き場もなくなってくる感じ。

この作者さんって『壷中の天国』の時に私の中で
数馬タイプの人だって認知してたんだけど…
このロリ・ぺド罵倒を見る限りではそうでもないのかなー。
いや、大掛かりな自分への被虐だったりしたら面白いのにな。
正真正銘の変態さん。

この本は結構好みだったよ。うん。
この人は変に本格ぶらない所が好き。


★★★★

最悪

2006年1月12日 ★★★☆
ISBN:4062735342 文庫 奥田 英朗 講談社 2002/09 ¥920

えーとね。一つ後悔。
それは構成が似ていると知らず
この本を伊坂幸太郎『ラッシュライフ』と続けて読んでしまった事。

個人個人が少しずつ関わっていく話、
と言う点では同じなのだけれど
読後感・人物描写・共感度・納得感・爽快感のどれ一つ取っても
『ラッシュライフ』の巧みさに負けちゃってる。

登場人物個人個人をまるで自分の分身のように思えるほどの
筆力が裏目に出て
登場人物の『自分の出来る範囲の生ぬるい頑張り』(状況に流される含む)に
段々ストレスが溜まっていくよ。
誰も何も決定的な悪いことなんてして無いのに(大きな意味で言えば和也も)
どんどん雪玉を雪の上で転がしてるみたいに手におえなくなってきて
でも、そのストレスですら『生ぬるい』から『最悪』でもない。

単純に読むタイミングがまずかった。
でも感想は感想だよな。


★★★☆(+☆は修正分)

ファンタズム

2006年1月8日 ★★★
ISBN:4061822926 新書 西澤 保彦 講談社 2002/12 ¥798

アマゾンの紹介文にはこうある。
“騙されるな!よく出来た物語に。”

うん。この一言に尽きますな。
さすがコピーを書く人は良く分かってらっしゃる。

西澤保彦の物語の醍醐味って何処だと思います?
私にとっては“どんなに非日常な設定でもルールが守られてる所”
なんですよ。
七回死ねたって、テレポートできたって、複製されたって
提示してあるヒントに乗れば必ずからくりが分かる所。

いや、“幻想ホラー”というのを見ずに読み進めていっちゃって。
確かに西澤氏っぽい良く出来た非常に面白い事件なんだわ。
(えー。これにどんなロジカルな展開図が!!?ワクワク
どんな風にこれにうまくサゲ付ける気ですか!?ドキドキ)
と読み進めていっちゃったんです。ハイ。

だから、これは『本格ミステリーの皮を被った幻想ホラー』なのだよ…。
理屈なんかありゃしねぇのよ。
これはミステリーじゃない。

じゃぁ私からも。
“騙されるな!よく出来た物語に。”

★★★
ISBN:4106027704 単行本 伊坂 幸太郎 新潮社 2002/07 ¥1,785

実はこれ、最後まで残してたんだ。
伊坂作品大好きで割と読んでるけど、どう聞いても
この作品のあらすじが一番面白そうだったから。

昔チュンソフトの『街』ってゲームがあって
8人の物語がちょっとずつリンクして作用しながら進んでいく。
そのゲームを思い出しましたね。

売れない女性画家と大金持ち傲慢画商。
カウンセラーと愛人サッカー選手。
リストラ中年と、犬。
一匹狼の泥棒。
赤い帽子の宗教青年。

記念日に登るタワーと、街角で好きな日本語を書いて貰う留学生を
軸に物語と人物が交差する。

時間軸が最後の仕掛けというんでしょうかね。
プロットがしっかりしてるからこそ矛盾が生じない(例えば黒澤)
巧妙なつくりの小説だったよー。
本当、今活躍してる作家さんの中で出版界の良心と呼びたいくらいですよこの人は。

この人の本なら、と信用して購入まで出来ちゃう数少ない作家さん。
今回も面白かった。残していた甲斐がありました。うん。

★★★★☆

魔王

2005年11月27日 ★★★★
ISBN:4062131463 単行本 伊坂 幸太郎 講談社 2005/10/20 ¥1,300

私、この作者さんは結構高度なエンターテイメントを
提供してくれる人だと思ってて、
今回もそのつもりで読み始めたら今回はちょっと毛色が違う。

今居る政治家を思わせる描写があったり
憲法と法律と大衆とファシズムへの問題提起があったり。

それがあまり押し付けがましくなく、
足元がざわざわする。妙な焦燥感に駆られる。

潤也君と詩織ちゃんと…死神の彼が救いだったな。


★★★★
ISBN:4061824007 新書 西尾 維新 講談社 2005/11/08 ¥1,134

中編の感想からどうぞ。

コレを踏まえて。

な、納得できねぇぇぇ。
なんだよ、全然何にも回収しきれてないじゃんよ。
使えねぇ伏線なら張っとかないでいただきたいですよ。
ご都合主義も物事の大仰さも、もう作風だと納得しておりますよ?
だからってこれはないですよ…。
もう物語を既存のものと比べてどうとか言うべきじゃないのは分かってる。
だったらせめて、せめてこの物語に軸が欲しい。
語られる言葉も確率の数字も信じられるものが欲しい。
じゃなきゃ何をどう信じて読み進めりゃいいものかわからん。

キッドピストルズシリーズのようにパラレルワールドの前置きがあったら
少しは納得したのだろうか。
友が、いーちゃんがどうだったら私は納得した?
全員死んで『全部戯言』といーちゃんだけが生き残ったら納得するかも。(えっ)

いーちゃんの名前、あれXXの名前をそのままはめて良いんですか?
結局XXのXの中での物語という暗喩?
ああ、表でも裏でも納得できない。

まぁ、お疲れ様って事で。(あっさり)



★★★★
ISBN:4103808063 単行本 江國 香織 新潮社 2003/11/19 ¥1,470

分かったような顔で押し付けられる感傷には飽き飽きだ。
なにより『号泣する準備はできていた』と
いうワードは汚い。
号泣しない為に手を尽くすのが大人です。

★★☆

文体練習

2005年11月1日 ★★★★
ISBN:4255960291 単行本 朝比奈 弘治 朝日出版社 1996/11 ¥3,568

気になってて気になってて気になってて
とうとう買った。
その厚さたるやもう、京極堂の『陰摩羅鬼の瑕』の!!

1/3

3568円。わぁん。

でもこの本は面白い。
ひとつのベーシックな文があって
それを五感に基づいて書き換えてみたり
白昼夢風に書き換えてみたり。

とにかくひとつの出来事について、
これだけの表現の可能性があるのだ、と示唆してくれる。
レーモン・クノーの原作を読んでないのだが
多分訳者の方は大変だったでしょうね。
「女子高生」はオリジナルだよね?

言葉遊びの好きな捻くれ物にはお勧め。
あ、PS(女子ファッション誌)で小林賢太郎もお勧めしてたよ。


★★★★

空は青いか

2005年10月24日 ★★★
ISBN:4062129841 単行本 花村 萬月 講談社 2005/05 ¥1,575

実際の暴力行為には嫌悪感を隠さない私だが
活字の暴力表現は大好きだ。特に花村萬月の容赦の無い暴力表現。

ま、そんなこと言ってもこれはただのエッセイですよ。
地元の若い奴と喧嘩した話だとか
愛犬の話だとか、感銘を受けたエロ表現の話とか。
軽ーく読める感じがいいかもしれない。

ただ、音楽の話で「今ナンバーガールを聴いている(中略)
音楽業界はもっと向井に注目するべきだ」みたいな話があって
私、この本新刊コーナーで見つけたんでちょっと笑ってしまった。
おいおい。音楽業界ってかみんなナンバガも向井も知ってんぜ。
と。
まぁ、発刊されたのは2005年の5月だけれど
初出は2001年。仕方ないか。タイムラグだな。

★★★

マドンナ

2005年10月19日 ★★★★☆
ISBN:4062114852 単行本 奥田 英朗 講談社 2002/10 ¥1,470

私ね、他人の会社の話を聞くのが好きなんだわ。
自分は同じ努め方をしてる訳じゃないから
話に出てくる登場人物も知らないし
職場の空気も知らないし、壁に貼ってあるだろうカレンダーの模様だって知らない。
でも、好きなの。
愚痴でも、遭った事の話でも、
『いや、あゆみにはつまらない話だとおもうんだけどさー会社でなー』って
そんな話が大好きなの。
多分、私の知らないところでの友人・恋人を窺い知る事が出来るのと
単純に動いてる人の動いてる話が好きだからなんだと思うんだ。

で、この本。まさしくそんなん。
語り手は皆会社員で、いわゆる普通の人の普通の暮らしで
そのなかで部下にほんのり恋心を抱いたり
息子がダンサーになりたがったり
総務部の不正と戦ってみたり
出来る女性上司を疎んでみたりする訳ですよ。

身内の会社話を聞くのでも面白がる私が
こんな登場人物の説明も業務の説明もオチまでついてるこの本を
面白がらないはずが無い。
ああ、働く大人の男はカッコ良いなぁぁぁぁ。

あ、最後の話はお父さんが超地元の前橋だから+☆。贔屓。


★★★★☆

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