空中ブランコ

2005年10月10日 ★★★★
ISBN:4163228705 単行本 奥田 英朗 文藝春秋 2004/04/24 ¥1,300

割と読書感想文書き連ねてきたけれど
初めて満点を付けざるを得なかった私の大ツボ、
「インザプール」の続編。デブで無邪気な伊良部医師と巨乳看護婦マユミちゃん、健在。
患者さんもその悩みも多岐にわたり
空中ブランコでどうしてもパートナーに邪魔される患者さん。
先端恐怖症のヤクザの患者さん。
どうしても大事な場面でやらかしたくなる患者さん。
ボールの投げ方がわからなくなってしまうプロ野球選手の患者さん。
どうしても前に書いた事があると錯覚してしまう女流作家の嘔吐症患者さん。

どれもこれも、伊良部医師の適当に見える助言と
その縦横無尽な行動力に、患者さんは中てられ、
ちゃんと自分で解決している。
狙ってやってるのか無意識のなせる技なのか…私にもわかりません。
読んで爽快感があるの。
娯楽作にふさわしい!

★★★★

13階段

2005年8月29日 ★★★★
ISBN:4062108569 単行本 高野 和明 講談社 2001/08 ¥1,680

つまらない傷害致死によっての2年の実刑を終えて出所した主人公。
出所した主人公を待っていたのは、殺してしまった被害者への損害賠償と世間の冷たい目に耐えている両親だった。

そこへ刑務官の南郷が現れて仕事を手伝わないか、と誘われた。
成功報酬は一千万。期間は3ヶ月。
目的は、記憶喪失で死刑の確定している男の無罪の証拠を集める事。
南郷と主人公の証拠探しの3ヶ月が始まる、と。

「あのぅ、あなた死刑を宣告された事、あるんですか?」
「あのぅ、もしかして前科もちでいらっしゃる?」
「あのぅ、前の職場は刑務官でいらっしゃった?」
と思わず尋ねてみたくなるほど、心理描写が妙にしっかりしてる。
テーマは「罪と罰」か?
ヒトがヒトを裁くってのはどういう事か。
ヒトがヒトを殺すってのはどういう事か。
重いテーマにもかかわらず、物語として面白い。
二転三転する物語にいちいちビクッとする。

映画化されてたよな。確か主人公は反町。
……見てみようかな。

最近読む本は割と良作揃い。嬉しいねぇ。


★★★★

流星ワゴン

2005年8月24日 ★★★★
ISBN:4062111101 単行本 重松 清 講談社 2002/02 ¥1,785

リストラされ、家庭もめちゃくちゃ、嫌っていた病床の父親から「電車代」をせしめて生活費に充てる主人公。
「死んじゃってもいいかな」なんて思ったとき、目の前に現れたオデッセイ(赤)。
乗っていたのはいつか新聞で見た事故で死んだ8歳の子供とその父親だった。

主人公は、オデッセイでドライブをしながら
どうして自分の人生はこうなってしまったのか、その起点にたびたび戻るのだ。
何をしても結局はなにも変えられない主人公と
その主人公の(ある意味)相方、若き日の自分の父親。

よく出来た話だとはお世辞にもいえない。
言葉足らずは多々あるし、心の移り変わりも無理矢理といえば無理矢理。
でも、ちゃんとココってツボは絶対外さない。
それは本当に小さな台詞だったりおそろいのフリースだったり。
やっぱり、根底にちゃんと血が通ってるからだろうなぁ。

私がもしオデッセイに連れて行かれるなら一体何時にだろうか?
高校1年生の冬?21歳の夏?


★★★★

真夜中の犬

2005年8月10日 ★★★★
ISBN:4334724140 文庫 花村 萬月 光文社 1997/06 ¥650

かぁぁぁっ!たまんないっすね。
花村萬月満喫気分になりまっすわ。
登場人物の一人一人が魅力的。
暴走気味で困惑しきりの貢も、あばすれマキも
腋臭のヤクザも、それから狛犬も。
暴力表現・性描写はこれはあまりきつくないし
あまり読んだ事無い人にはこれを勧めるかもしれないなぁ。
(私は断然笑う山崎が好き)
幸子の存在があるのと無いのではこの本の印象が全く違う物になっただろうな。
勿論居てよかったんだよ。私にとっても登場人物にとっても。

★★★★

懐かしい骨

2005年8月8日 ★★★★
ISBN:4575505013 文庫 小池 真理子 双葉社 1994/12 ¥580

両親が亡くなって、誰も住まなくなった生家を
解体すると決めた早紀子と真吾の兄妹。
そこへ突然の知らせが届く。
「物置の下から白骨死体が発見された」

その知らせで早紀子は、20数年前突然行方をくらました
垢抜けた美人であった母の友人、美和を思い出す。
早紀子は美和と、歯科医であった父の仲を疑っていた。と。

誰でも、はるか昔の両親の謎ってのは持ってるものだと思うんだけど
結局は聞く事も出来ず、有耶無耶で変な印象だけを残して
忘れられちゃうんだよねぇ。
人望のあった父とその父を心から愛していた母。
子供の視点からはどうしても見えなかった事が
20数年たってようやく判るようになる、と。

先が気になる上手い作り方でもう、ぐいぐい読んだ。
サスペンス調ってのかね。真相が知りたくなる。

それから、この作品はタイトルが絶妙。

★★★★
ISBN:4488418015 文庫 黒崎 緑 東京創元社 1997/01 ¥672

なんとなく読みたくなって本棚の奥のほうから出してきた。
探偵役(ボケ)の保住君と、助手役(ツッコミ)の和戸君の
二人の会話だけで話が進む第一話の『番犬騒動』が好きかな。
読んでるときは、二人のボケ倒しのベタベタな漫才会話に爆笑したのだが
友人にオススメを聞かれたときにこれを紹介すると
すこぶる受けが悪かった。曰く「笑い所が全く判らない」。
まぁ確かにベタベタでつまらないボケと
ありきたりなツッコミで、ミステリー好きには鬱陶しいかもしれないし
ベタベタな漫才好きにはミステリーがうざいのかも。

まぁ私は大好きです。万人(特に本格好き)にはオススメしませんが。

★★★★

鬼子

2005年8月2日 ★★★★
ISBN:4344001257 単行本 新堂 冬樹 幻冬舎 2001/10 ¥1,890

陳腐で自己満足的な恋愛小説しか書けないくせに
世間を見下し自分の無力を認めない作家主人公。
ある時期を境に始まった家庭崩壊。
息子に蔑まれ、使い走りをさせられ、暴力を振るわれ
段々失われていく父親、いや人間としての尊厳。
なぜ息子はいきなり豹変してしまったのか…。

って本なんだけど、特筆すべきは上巻。
豹変した息子の発言・暴力が、ただでさえ自尊心の高い主人公の
全てを踏みにじっていく過程がもう、胃が痛くなるほどの臨場感。
特に唯一の味方であった妹の詩織にまで手が及ぶ所など
くらくらと眩暈がしたくらいだ。

まぁ、最後の1/3は無くても良かったかな。


★★★★
ISBN:4594049834 文庫 金子 浩 扶桑社 2005/06 ¥980

日本にもバシバシファンが増えてるケッチャムさん。
オイ、オフスプリングはまだなのか?

アダルトチルドレン、なんて単語が一昔前流行ったがまさしくそんな主人公。
癇癪持ちでナルシストでコンプレックス持ちで
暴力的なくせに外見だけは少し人を惹きつけるレイ・パイ(パイ・メイっぽい名前。蛇足)
が、段々上手くいかなくなってくる全てに切れて殺戮に至るお話。
冒頭で、二人組みの女の子を射殺する所から始まるのだが、
ケッチャム特有のあの肌寒い夜の空気みたいなあのゾクゾクした感じがなんとも心地良い。
英語力があったら英文で読みたいくらいだわ。

どうでもいいけど、最初で射殺される二人組の女の子、
どうみてもロシアのお騒がせユニットにしか見えないのはケッチャムの遊び心?


★★★★
ISBN:406182399X 新書 西尾 維新 講談社 2005/06/07 ¥1,134

ハイ。中編。
割と人が死なないめの巻ですね。
中巻って感想書きにくいな…。

ずーーーっと伏線張られてた想影真心、ようやく本登場。
思わず既刊を読み返さないといけなくなるほど
懐かしい名前が出てくることもしばしばで困る。
(いちいち覚えてませんがな)

玖渚機関の話もちょっとずつ出てきたね。零識も。
狐面さん、自分の頭の中ではどうも超人扱いに
なっているので、気配読むのとか平気で出来そうになってるんだけど
実際はどうなんですかね。いーちゃんは甘いんじゃないかね。全体的に。

さぁ。最後の一巻。
勿論いーちゃんフルネーム出て来るんだよな?
これ、皆が納得できる形で終わるんだよな?
最終巻は、面白くてもダメダメだとしても
この人ならアリかもな…と思ってしまう甘い自分が居ます。
否、別に好きじゃ…好きじゃないんですよ!?(なぜか必死)

★★★★

チルドレン

2005年7月31日 ★★★★
ISBN:4062124424 単行本 伊坂 幸太郎 講談社 2004/05/21 ¥1,575

ちょっと風変わりで騒がしいけど
芯が一本とおった友人『陣内』君を中心とした短編。

大学時代と現在を上手に交差させて
陣内君、大活躍。
はじめは「うわー。何こいつ。無駄に偉そう」と
思っていても、最後にはちゃんと陣内が好きになってる。
登場人物への、例えば陣内を見ている友人達一人一人に
物凄く感情移入がしやすい。描き方が上手だよなぁ。


★★★★
ISBN:4488017002 単行本 伊坂 幸太郎 東京創元社 2003/11/20 ¥1,575

現在と2年前の話が少しずつ絡み合って
いずれ一本に繋がる。
著者が上手な人なので安心して読める。

ラスト近くが浅いというご意見もありそうだが
私はあの位で丁度いいと思う。
あんまり大判風呂敷広げられてもね。
ちょっと伏線の活かし方がらしくなくて勿体無いな、とは思ったけど。

ちょっと実際違う意味で怖い話。
私も検査、してみようかな…という気分になった。


★★★★

黒焦げ美人

2005年7月29日 ★★★★
ISBN:4163212906 単行本 岩井 志麻子 文芸春秋 2002/09 ¥1,200

「生きながら火に焼かれて」と同時に借りてきた。
焼繋がり。

今回は、「色恋沙汰の渦中の女」が主人公じゃないの、珍しく。
その妹がストーリーテラー。
姉の可愛らしさと放蕩さを
藤原の冷淡さとそれでも人を惹き付ける魅力を
大橋の人間地味た本当の汚さを
怜悧な目で感じてはバサバサと自分で切り取って行く。
淡々としていながらそれでも感情豊かなこの妹のキャラクターは、
岩井氏らしくもあり今まで無かったキャラのようでもある。

藤原の標準語と、周りの人間の岡山弁とが
お互いを上手く惹きたてあっていて
この作品の裏テーマらしきものはもうそれだけで表現されていると言っても過言ではない気がする。
うわ、このレビューわかりにく。


★★★★

サイケ

2005年7月29日 ★★★★
ISBN:408774471X 単行本 姫野 カオルコ 集英社 2000/06 ¥1,575

なんか一時期凄くはまって
この人の本読み倒してた時期があったけど
「変わった女の子主張がどうも鼻につく」と
読むのを止めてはや数年。

物凄く久しぶりに読んだら
引き込まれてしまうくらいよく出来たお話だった。
短編集なんだけど特に一話目。
全文私の自己紹介に使わせて貰いたい位。
変態、なんて一言じゃとてもとても済ませられない。
なかなかにして粒ぞろいだったけれど
一話目が一番印象的かな。
で、結局何が言いたいのか解りかねる話もあったし。
実際、この人、どうなんだろうなぁ。
意外に普通な気がする。


★★★★
ISBN:4344001524 単行本 小林 賢太郎 幻冬舎 2002/01 ¥1,500

ラーメンズ『home』『FLAT』『news』の文章化。
戯曲集というんでしたか。
ラーメンズのあの独特の間
言葉遊びと緻密な構成が目に浮かぶ。

ただ、片桐のアクションだけはこれでは浮かばないんだよな。残念!!

でも、こうやって脚本だけ読んで
十分面白いってのはやっぱり凄いよ。
小林賢太郎は結構大口叩くけど
やっぱりそれだけの事はある。

DVD化を切に待ち望んでおりますよ。
本公演・新作も。

★★★★

ZOO

2005年7月28日 ★★★★
ISBN:4087745341 単行本 乙一 集英社 2003/06 ¥1,575

乙一は本当に上手な作家さんだと思う。
特に弱者、虐げられるものの心の表現は
多分この人以上に上手な人なんていないんじゃないだろうか。
本当なら耐えられないほどの被虐を
淡々と流していき、それがその内詰まって行く。
そんな短編集。

なんか必要以上に「死」や「別れ」を意識させられる。

切り口は鮮やか。
でも、ちょっとえぐみがたりないかなぁ。
いや、それなりに楽しみましたが。
「SEVENROOMS」と「落ちる飛行機の中で」が個人的には好きかな。
前半はいやにコミカルタッチのものが多い。
……うーん。こういうセンスは無いのかも。

こんど爆笑問題の番組に出るようなので本当に楽しみ。

★★★★
ISBN:4048735470 単行本 伊坂 幸太郎 角川書店 2004/07/31 ¥1,575

グラスホッパーってのはバッタ・キリギリスの事。
群集が増えてくると、その中で何割かは凶悪なものが出てくる、というお話が真ん中に通っている。
(ファッションに関心の高いブランド志向人のこともそう言うらしいが)
主人公は3人。
妻の仇討ちを企む鈴木。
岩元に操られてるんじゃないか、と思いながらもあっさりとした虐殺のプロ、蝉。
自殺屋、鯨。

その3人が「押し屋」と呼ばれる、車や電車に人を轢かせる男を追うお話。

段々それぞれが近づいていき、同じ車に乗る所でボルテージは最高潮。
んん、キャラクターの作りは本当に上手。
それぞれが魅力的。

ラストの駅のシーンは無駄にビクビクした。
怖いな。押し屋。


★★★★

岡山女

2005年7月27日 ★★★★
ISBN:4043596030 文庫 岩井 志麻子 角川書店 2003/07 ¥500

艶美で、ギチギチ。
囲われ女が、無理心中で片目を切られ
『見えないもの』がその左目で見えるようになるお話なのだが
とにかく、状況描写が巧い。
お得意の岡山弁が田舎特有の閉鎖感をうまく引き立ててくれる。

愛憎とか、禁忌とか、見てはいけない物を
ストレート直球で書く人。

女の、業。怖い怖い。


★★★★

朝霧

2005年7月27日 ★★★★
ISBN:4488413056 文庫 北村 薫 東京創元社 2004/04/09 ¥588

そうそう。私がはじめて落語に興味を持ったのはこのシリーズのおかげだった。
思えば道をずいぶん外してしまった様に思うけれど。

さて、相変わらずな円紫師匠と、ちゃんと大人になる『私』。

私は『私』に物凄く憧れる。
素直に柔らかに物事を吸収できる人間になりたいと切に思う。

ちなみに『天狗裁き』は私も大好きな噺だ。

★★★★
ISBN:4594022715 文庫 有沢 善樹 扶桑社 1997/06 ¥620

自分の息子をレイプする狡猾な暴力旦那から
息子を守る母親、リディアの話。

だらだらと埒のあかない裁判に母親と同じ様にイライラし
父親が振りかざす圧倒的な力に息子と同じ様に恐怖し
起こる一つの一つに息を飲んだ。

いつものような直接的なスプラッタ描写が少ない代わりに
メンタル面が丁寧に書かれている。
父親が陰で行ってた連続レイプ殺人があまり絡んでこなかったのが勿体無いくらいか。

それでも一応言っておく。

ケッチャムさん、あんた頭イってるよ。


★★★★
ISBN:4101250219 文庫 伊坂 幸太郎 新潮社 2003/11 ¥660

この人のなにが凄いって

構成と設定の巧みさだと思う。
今回は誰も知らない鎖国の島。
喋るカカシ、処刑人『桜』、侍『小山田』。
魅力的であり、突飛な設定であるにもかかわらず読むと疑問を感じなくなるリアルさ。
リョコウバトの虐殺には心が痛んだ。

リアル世界での城山の残虐さと、荻島の非現実さがうまく引き立てあって、
より一層読者の興味を煽る。(なんの説明だ。コーヒーか)

聞けばこちらがデビュー作。
期待の新鋭。伊坂幸太郎。(野村萬斉似)

★★★★

1 2 3

 

お気に入り日記の更新

最新のコメント

日記内を検索